書籍情報
著者:稲垣栄洋
読み終えるまでの平均的な時間:1時間58分
ページ:184
出版社:PHP研究所
発行日:2016年4月22日

この本のまとめ
この本は、身近な植物学についてわかりやすく書かれています。
草木・花などの自然だけでなく、野菜・果物など身近な食べ物についても触れられています。
その歴史や、なぜそうなったのか?についても説明されており、楽しく植物学を学ぶことができる本です。
この本のなかで特に印象深かった話をいくつかピックアップしたいと思います。

1.身近な花と昆虫の話
春先の花と昆虫の話
花の習性と昆虫との関係についての話があります。
春先には黄色い花が多く、それは春先に最初に活動を始める昆虫であるアブが好む色だからです。
しかしアブは頭が良くないため、花の種類を識別できず、さまざまな花を飛び回ってしまいます。
この問題を解決するため、春先に咲く花はまとまって咲く性質があります。
そうすることで同じ種類の花を飛び回り受粉の確率が高くなるのです。
だから春先の花は綺麗なお花畑をつくるのですね。

紫色の花と昆虫の話
一方ミツバチは紫色を好みます。
さらにミツバチは頭も良く、同じ種類の花を識別して花粉を運んでくれます。
そこで紫色の花はミツバチに花粉を運んでもらおうと沢山の蜜を用意するのですが、それだと他の虫も集まってしまいます。
そこで紫色の花は、蜜を花の奥に隠しました。頭のいい昆虫だけがたどり着けるようにしたのです。
紫色の花を見ると、複雑な形をしています。細長い構造の形をしていて、花の奥深くに蜜が隠されているのが基本の形です。そして、花びらには蜜のありかを示す蜜標というサインが示されています。このサインを理解する頭の良さと、細い場所に潜り込んで、後ずさりで出てくるという能力のある虫だけが蜜にありつけるようになっているのです。
稲垣 栄洋. 面白くて眠れなくなる植物学 (p.29). 株式会社PHP研究所. Kindle 版.

2.身近な昆虫と植物の話
モンシロチョウと菜の花の話
モンシロチョウは菜の葉に卵を産みます。なぜもっと色々な植物に産まないのでしょうか?
植物は昆虫の食害を防ぐために、さまざまな忌避物質や毒物質で防御しています。
一方で昆虫も、なんとか植物を食べようと毒性を分解するよう進化してきました。
植物によって毒性は違うので、モンシロチョウは菜の葉の毒性に対抗するように進化してきたのです。

3.身近な植物の色の話
植物の紅葉の話
秋になると紅葉する植物があります。
これは秋になって光合成の効率が落ちた葉を落とすことです。
このとき植物は葉の付け根に「離層」という水分や栄養素を通さない層をつくります。
しかし葉では光合成による糖の製造は続けられており、木に送られなくなった糖分は葉に蓄積されていきます。
この糖分からアントシアニンという赤色の色素が作られるのです。
そして低温になると葉緑素が壊れていきます。
葉緑素の緑色が失われていくと、葉に貯まっていたアントシアニンの赤色が目立ってくるのです。

赤色の海藻の話
海の中海藻も光合成をしています。
地上の植物は赤色や青色の光を吸収していますが、海中ではそれらの光は届きません。
そのため仕方なく光合成には適さない緑色の光を吸収するのです。
これらの海藻は地上で見ると鮮やかな赤色に見えます。

虹色のトウモロコシの話
グラスジェムコーンというトウモロコシは1粒1粒のトウモロコシがカラフルな色をしています。
トウモロコシの粒の色は花粉が交配した遺伝子によって決まります。
しかしトウモロコシの粒は胚を包み込む部分、つまり親の植物の遺伝子を持っているはずです。
なぜ胚の遺伝子がトウモロコシの粒に影響するのでしょうか?
この現象は「キセニア」と呼ばれ、植物の花粉が核を2つ持っており、1つが胚に、1つが胚乳をつくるためです。

4.身近な野菜や果物の話
玉ねぎと涙の話
玉ねぎを切ると細胞が壊れて、細胞の中にあったアイリンが細胞の外に出てきます。
すると、細胞の外にある酵素によってアリシンという刺激物質になり、目を刺激するのです。
もともと刺激物質を持っていると、玉ねぎ自体も悪影響があるため、細胞が破壊された時だけ刺激物質が出るようになっています。
そのため縦切りにしたほうが細胞が壊れにくくアリシンが出にくく、炒め物などに適しています。
一方、横切りにすると細胞が壊れやすくなり、辛味成分が出やすくサラダなどに適しています。

大根の部位の話
大根は上下で部位が違います。
上部は胚軸が太ってできたもので、つるんとして根がありません。
一方、下部のほうは細かいひげ根がついており、根が太ってできたものです。
植物は根で吸収した水分を地上に送ります。そのため胚軸の部分は水分が多く甘くなっています。
一方、根の部分は蓄積した栄養を守るために辛味成分が多く、辛味が増しています。

感想
学校で学んだことを復習しながら、楽しく植物学を学ぶことができました。
なぜ光合成をしているのに赤色の海藻があるのか?という話や、虹色のトウモロコシ「グラスジェムコーン」の話が特に興味深く感じました。
話の幅が広いため、人それぞれ「面白いな」と思うポイントが出てきそうです。
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